第8回 コンタクトセンターの科学:「アーランの基礎②」― 必要なエージェント数を求めよう
みなさま、こんにちは。
さて、今回は、アーランの基礎の2回目です。
必要なエージェント数を求めてみましょう。
コンタクトセンターでは、目標設定を行い、各種KPIを使いながら運営されていると思います。着目すべきKPIの1つにサービスレベルがあります。サービスレベルとは、20秒以内に何%の電話に応答できたかという値です。20秒以内に80%以上の電話に応答するなどという目標を立てて使います。インバウンドのコンタクトセンターでは、必ず把握すべきKPIの一つです。
この目標とするサービスレベルを達成するためには、何人のエージェントさんを配置すればよいのでしょうか? その答えは、経験・勘・度胸で求めるのではなく、理論で求めましょう。最近WFMシステムの利用が増えつつありますが、WFMシステムの中でやっていることは、結局アーランを使って値を求めているのです。また、WFMシステムを使わなくても、必要なエージェント数の算出はできるのです。まずは理論を理解し実践してみましょう。
では、必要なエージェント数を求めて行きましょう。
アーランC式
前回、お話したとおり、コンタクトセンターで使うアーラン式はB式とC式とがあり、必要なエージェント数を求めるのはアーランC式を使います。
コンタクトセンターで使うアーラン式は、実はこの2つの式、アーランB式とC式になります。
アーランB式:必要回線数を求める アーランC式:必要エージェント数を求める |
しかしながら、前回と同様に、値を求めるのに実際には式を意識することはございません。
ツールを使って簡単に求めることが出来ます。今回も「QueueView」を使ってみます。
必要なエージェントを求める
計算に必要な入力値は以下の通りです。
平均通話時間(秒) | Average Talk Time(Sec.) |
平均後処理時間(秒) | After-Call Work Time(Sec.) |
30分間のコール数 | Calls per Half-Hour |
サービスレベル目標時間(秒) | Service Level Objective(Sec.) |
平均通話時間、後処理時間は、CMSのレポートのVDN、または、スキルレポートから当てはめればよいです。30分間のコール数は、もし、CMSのインターバルが1時間であれば、1時間のコール数を2で割って下さい。逆に15分の場合は、倍にして下さい。サービスレベル目標時間は、20秒とか30秒とか、20秒以内に80%の電話に応答するのが目標であれば、20秒となります。
ヒント:
KPIのひとつに、AHT(Average Handling Time)というものがあります。これは以下の式で求められます。 AHT(Average Handling Time) = 平均通話時間 + 平均後処理時間 つまり、呼に関わった時間の平均となります。この世界ではけっこうAHTを何かと使うので覚えておきましょう。 |
それでは、以下の条件の場合、必要なエージェント数を求めてみましょう。
平均通話時間(秒) | 300秒 |
平均後処理時間(秒) | 60秒 |
30分間のコール数 | 100コール |
サービスレベル目標時間(秒) | 20秒 |
上記の値を入力し、「Calculate」ボタンを押して下さい。以下の結果が得られます。
Agents | 必要なエージェント数 |
P(O)% | 0秒以上の潜在ディレイ%。待ち呼になる確率。 |
ASA | 平均応答時間 |
DLYDLY | ディレイ呼の平均ディレイ時間 |
Q1 | 常にキューに入っている平均呼数 |
Q2 | エージェントがビジー状態のときにキューに入っている平均着信呼数 |
SL% | サービスレベル |
OCC% | 稼働率 |
TKLD | トランクロード(アーラン) |
それでは計算結果からサービスレベル 80%以上を達成するためには、何エージェント必要でしょうか?
エージェント数が24だと76%になってしまうので、80%以上を満たすエージェント数は25ということになります。
さて、せっかくなので、このツールで求められる他にも重要な値を説明しましょう。80%のサービスレベルを満たすという条件下においては、OCC%(稼働率)は80%になります。P(O)%は、待ち呼になる確率となります。ここでは20%以上が待ち呼に入ると計算されています。また、Q2が4.0ということは、計算上この状況下において、待ち呼は4つ発生するということです。このことは、「待ち呼が1つ発生しても、血眼になる必要はない」と言ってもよいでしょう。もし、待ち呼を監視するツール等にしきい値を設定するのであれば、感覚でしきい値を設けるのではなく、この値を参考にすることができると思います。
呼量予測・サービスレベルはインターバル単位で見ていこう
レポートの集計単位は、ポイントによって異なります。みなさまがレポートを集計する単位は、何をどう見たいかによって、月・週・日・インターバルのどの切り口で見るかが重要となってきます。
このツールからでも明らかなように、必要なエージェント数の算出や、サービスレベルの監視は、インターバル単位で見ていく必要があるということがおわかりになったと思います。
陥りやすい罠としては、日単位でサービスレベルを捕らえてしまうことがあります。80%が目標のセンターで、その日のサービスレベルが82%だった場合、それは評価してもよいのでしょうか?
時間帯によっては、100%のときもあるでしょうし、逆に、80%を大きく下回っている時間帯もあるはずです。インターバル別にサービスレベルを監視することで、どの時間のサービスレベルが悪かったのかを把握でき、何回目標を達成できなかったのか、ではなぜ目標を達成できなかったのかという、改善のヒントを探ることが可能となります。
TIPS:
QueueViewには、「Delays」というもう1つのメニューがあり、待ち時間の分布毎に想定される待ち呼数の計算ができます。 |
おわりに
さて、今回の連載もお楽しみ頂けましたでしょうか?
ちょっと基礎的なことでしたので面白みに欠けたかもしれませんね。でも、とても大切なことですので、覚えておいて下さいね。次回は今回の基礎を使って応用していきましょう。
それでは、次回もご期待下さい。
第9回
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